2012/駒場だより/和田・小林研究室

東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系 (兼担:理学系研究科 生物科学専攻)

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Diary:駒場だより

2012

Apr 26 2012

ちょっと残念なこと

120426_3.jpg中央分離帯に咲くムラサキツメクサ 駒場キャンパスの近くには、駒場公園や代々木公園、明治神宮、新宿御苑など、都心の中でも緑が豊富な方で、交通量は多いですが、都会特有の殺伐とした空気がだいぶ軽減されているように思います。代々木公園沿いの井ノ頭通りにも、ムラサキツメクサが咲いていたりと、多少はのどかな春の風景が広がっていました。
 そんな風景に心を癒されていたのですが、ふと気が付いたら、なんと中央分離帯の雑草たちが皆、刈られてしまっているではありませんか。せっかくの春の風景が台無しとなってしまっていました。自動車運転の邪魔になるとも思えないのですが、ちょっと残念に感じました。


120326_1.jpg刈り取られる前120426_2.jpg刈り取られた後

Apr 20 2012

駒場の春の花たち

 春シーズン本格化、ということで、駒場キャンパスにもたくさんの春の花が咲き乱れています。今回はそんな駒場に咲く雑草をいくつか紹介したいと思います。日頃はなんの気にも留めない雑草たちですが、よーく覗き込んでみると、じつはみなとてもかわいらしい表情をしています。
「いつもの道で、なんの気なしにちょっと立ち止まる。そこになにがいるのか、どんな姿か、なにをしているのか。 初めての関心、なにげない不思議を抱いたとき、なぜだかワクワクしてくるはずです。あなたが住んでいる世界は、どんな姿なのでしょう。私のそれとは、まるで違うはずなのです。」(「身近な雑草のふしぎ」 森昭彦著 SoftBank Creative より)


120419_hananira.jpgハナニラ120419_himeodorikoso.jpgヒメオドリコソウ120419_karasunoendo.jpgカラスノエンドウ120419_midorihakobe.jpgミドリハコベ120419_oinunofuguri.jpgオオイヌノフグリ120419_sirobanatanpopo.jpgシロバナタンポポ

Apr 10 2012

新学期の始まり

120410_sakura.jpg
 いろいろ慌ただしくしていたら、いつの間にか新学期を迎えていました。そしてこの春、和田研には4人が新たに加わりました。ポスドク一人、博士課程(社会人入学)一人、修士課程一人、学部生一人、といった内訳です。春の訪れとともに研究室にもとても活気が出てきて、ウキウキ嬉しくなっちゃいます。15号館裏の階段から外に出れば、今は満開の桜がお出迎え。いつもは静かなグランド脇の通りも、写真を撮る人、お昼を食べる人、散歩する人など、様々な人々でにぎわっています。共通するのは、皆笑顔!ということで、桜の持つ力はすごいです。


120410_sumire.jpgタチツボスミレでしょうか?
 また、地面に視線を向ければ、小さく可憐に咲くスミレに目が留まります。駒場キャンパスでも結構咲いているのですが、自動車に蹂躙されるので、見つかるのは建物の隅や木の周りといった、目立たないところばかりです。その淋しげな姿を見ると、上ばかりを見上げていないで、たまには足元に健気に咲く小さな植物にも目をやってあげて、と思ってしまいます(スミレはまだ注目されている方だとは思いますが)。



Mar 18 2012

植物生理学会@京都産業大学

120318_1.jpg会場は丘の上、会場まで歩くとなかなかの運動。 第53回植物生理学会年会が京都産業大学にて開催されました。その前日に催されたオルガネラワークショップも含め、沢山の面白い話が聞けて、とても発表を楽しんだと共に、非常に刺激を受けました。学会直後はやる気に満ちるので良いですね。
 さて、京都産業大学は京都駅からだいぶ北へ(15kmくらい?)行ったところで、小高い丘の上にあり、とても自然に恵まれたところにありました。そこで、あまり時間はありませんでしたが、またまた"小さき植物たち"の観察をしてきました(地衣は厳密には植物ではありませんが)。今回も例のごとく名前は適当なので、あてにしないでください。かわいいつくしんぼ(シダ植物のスギナの胞子茎)も顔を出していましたよ。

120318_tsukushi.jpg春といえば、つくしです120318_tachihigegoke.jpgタチヒゲゴケ?サクがなんともかわいらしい。120318_kiumenokigoke.jpgキウメノキゴケ?120318_Matsugegoke2.jpgマツゲゴケ?左下は粉芽とまつ毛のようなシリア。

Mar 13 2012

久しぶりに良い天気

 ここのところ湿っぽい天気が続いていましたが、今日は久しぶりに明るい日差しに恵まれました。今年は気温が低めなためか、駒場の梅は、まさに今満開の時期を迎えているといった感じです。早くも銀杏並木にはサークルの看板が立ち並び、花壇に咲く菜の花に温かい光が射すと、いよいよ新しいシーズンが始まる予感でいっぱいです。もう半月も経てば、並木はキラキラした瞳の新入生で溢れかえることでしょう。
 ただ、春の訪れは嬉しい一方、寂しい気持ちも同居するのは、この季節が常に出会いと別れを共に連れてくるからでしょうか(ちょっとしんみり)。
120313_1.jpg時計台を背景に梅の淡い花。あまり上手に撮れなかった。

120313_2.jpg梅の花。今が満開。120313_3.jpg菜の花からはハチミツのにおい。

Mar 04 2012

コケと地衣@東大山中寮

 生物部会の教員合宿ということで、3月3日から4日にかけて、東京大学山中寮内藤セミナーハウスへ行ってきました。山中湖は、富士五湖の中で最も標高の高いところにあるだけあり、湖畔には雪が沢山残っていました。また合宿中もちらちらと雪が舞い降りていました。というわけで外は寒かったですが、山中寮は2009年に内藤進氏(リンナイ株式会社会長)のサポートにより全面改修がなされたということで、寮内はきれいで暖かく、とても快適でした(お風呂は残念ながら故障中でしたが)。

120304_1.jpg

120304_2.jpg椎茸の原木に使われるイヌシデ。コケや地衣の楽園と化しています。 積もった雪でほとんど出歩けませんでしたが、せっかく自然豊かなところに来たので、セミナーハウスの周辺の木々に生えた小さき者たちを観察してみました。さすが、この辺りは空気がきれいらしく、木々に数多くのコケや地衣類が住み着いていました。特に、イヌシデ(犬四手)の幹は人気物件らしく、苔も地衣もところ狭しと同居していました。

 いくつかコケの写真を紹介します(つけてある名前は、図鑑を参照すると見た目それらしいというだけで、正しくない可能性が大いにありますので、ご参考までにとどめておいてください)。いくつかの種類でひょろんと伸びているのは胞子体で、その先端の胞子嚢をコケ植物では蒴(サク)とよびます。この胞子体は複相(2n)で、受精卵から発達します。サクでは減数分裂が行われ、単相(n)の胞子が形成されます。胞子が放出されて発芽すると葉のような植物体が発達しますが、これは配偶体で、核相はやはり単相(n)です。


120304_hanehitsujigoke.jpgハネヒツジゴケ?120304_kasagokemodoki.jpgカサゴケモドキ?120304_karahutokinmou.jpgカラフトキンモウゴケ?120304_koke_humei.jpg不明


 さて、次は地衣類をいくつか紹介します(コケ同様、名前はあてずっぽうなので、決して信用しないでください)。地衣類は"コケ"が名前につくものが多く、植物の仲間ような印象を持たれがちですが、実は菌類の仲間で、コケ植物とは進化上は非常に遠い関係にあります。なぜ植物の仲間のようなイメージがあるかというと、地衣類は緑藻やラン藻(シアノバクテリア)と永続的な共生関係を結んでおり、彼らの行う光合成に依存して生きているからです。逆に言うと、菌類の中で、藻類やラン藻と共生関係を維持するようになったものを、地衣類と呼んでいる、というわけです。

120304_hondosaruogase.jpgホンドサルオガセ?120304_umenokigoke.jpgウメノキゴケ?120304_oonikuibogoke.jpgオオニクイボゴケ?120304_chijirourajiro.jpgチヂレウラジロゲジゲジゴケ?


 地衣類は低温、高温、乾燥、湿潤などの厳しい環境に強いものが多く、北極や南極、高山、砂漠、熱帯雨林と、その分布域はとても広いのが特徴です。そのため、火山噴火後にできた溶岩の裸地などにおける先駆植物(植物遷移のトップバッター、厳密には植物ではありませんが)としても有名です。
 そんなたくましい一面がある一方で、実は環境汚染には弱いものが多く、大気汚染の指標生物として使われるほどです。そんなわけで、都心では割と自然豊かだと思われる駒場キャンパス内や代々木公園、新宿御苑でも、見られるのはレプラゴケの一種のようなものばかりで、地衣類の多様性は完全に失われてしまっています。山中寮周辺の木々には、多種多様な地衣類が生息しており、自然の豊かさを実感しました。

Mar 02 2012

HPLC-ELSDの導入

120302_1.jpg1テーブルを占領したHPLC-ELSDシステム。 ラボにHPLCが新規に導入されました。脂質の分析が目的です。これまでは、植物サンプルから脂質を抽出した後は、薄層クロマトグラフィー(TLC)で個々の脂質成分を分離・回収し、脂肪酸を加メタノール分解(メタノリシス)した後、メチル化された脂肪酸をガスクロマトグラフィーで分析する、という手順でグリセロ脂質の含量を測定していました。とても大変な作業です。しかし、HPLCで定量できるようになれば、TLC分離やメタノリシスは必要なくなり、大幅に分析にかける労力や時間を削減することができます。特に、植物脂質をTLCでちゃんと分離するには、二次元で時間をかけて行わなければならないのですが、天候や展開溶媒のデキなどで展開のパターンが容易に変わるので、これを回避できるのはありがたいです。
120302_2.jpgSofTA社の蒸発光散乱検出器。 脂質成分の定量は、蒸発光散乱検出(Evaporative Light Scattering Detection; ELSD)という手法によって行います。カラム溶出後に移動相を気化し、残った目的成分の微粒子に光を当ててその散乱光を測定します。移動相よりも揮発性の低い成分なら、ほぼすべての化合物を、その光学的性質(吸収波長や吸光係数など)によらずに検出できる、という優れものです。グリセロ脂質の分析としては、脂肪酸組成までは分からない、というのが欠点となりますが。
 この分析法の成否を決めるのは、HPLCでどれだけきれいに個々の脂質成分が分離できるか、という点に尽きると思います。カラムの種類や溶媒の組成、グラジェントのかけ方、温度などで分離パターンは変わってきますので、その条件検討が、まず最初の重要な作業となるでしょう。今後、当ラボの脂質分析の主戦力となってくれることを期待しています。

Feb 29 2012

雪の閏日

120229_1.jpgすっかり葉を落とした銀杏並木も、今日は雪化粧。 今日は4年に一度の閏(うるう)日、2月もはや最後の日を迎えました。例年なら、そろそろ春の足音が間近に聞こえる時期ですが、今日は、東京では珍しく、沢山の雪が舞いました。駒場キャンパスも真っ白に雪化粧。銀杏並木も、時計台も、アドミニ棟前のヒマラヤスギも、みな白く着飾って、あっという間に冬景色に様変わりです。つい先日、キャンパス内ではカエルらしき鳴き声も聞こえたのですが、今、どうしているかな...ただ、天気予報を見ると、来週からは暖かくなるようです。最後のお別れにと、冬が閏日を選んだのでしょうか。

120229_2.jpg駒場キャンパスの時計台。120229_3.jpgアドミニ棟前のヒマラヤスギ。雪が似合う。

Feb 05 2012

スプリング・エフェメラル

 春先に花をつけ、夏まで葉をつけると、あとは地下で過ごす草花をスプリング・エフェメラル(spring ephemeral、"春の短い命"の意)といい、日本では、「春の妖精」というかわいらしい愛称で呼ばれるそうです。
 フクジュソウは典型的な「春の妖精」で、初春に花を咲かせ、夏までの間に光合成によって栄養を蓄えると地上部は枯れ、そのあとは春まで地下で過ごすとのこと。まさに春を告げる花というわけです。

 さて、駒場キャンパス内では春の到来を告げるサインはまだ見つけられませんでしたが、ちょっと足を延ばした新宿御苑では、この黄色の可憐な妖精が、一足先にひょっこり顔を出していました。共演していたスイセンのペーパーホワイトから、そろそろ主役のバトンを受け取ったことでしょう。

hukujuso.jpg奥がフクジュソウ(あまり上手く撮れなかった)。黄色い花弁は光沢があって、日光を集めて体温を上げているそうです。その熱で虫を誘因するらしい。PaperWhite.jpgこちらはペーパーホワイトという名のスイセン。開花時期は12~2月だそうです。

 一方、同じく春の花であるミツマタは、まだ冬の眠りの途中でした。こちらも、春の訪れの一足先に咲く花で、春を待ちかねたように淡い黄色の花を一斉に咲かせるので、"サキサク"と万葉歌人に読まれたそうです。ついでに、カンツバキ(寒椿)の写真も。こちらは、ツバキとサザンカとの種間交雑品種らしいですよ。

mitsumata.jpg和紙の原料として有名なミツマタ。Kantsubaki.jpg寒椿(開花期11~2月)もそろそろ店じまい。

Feb 03 2012

立春

今日は節分、明日は立春、春の気たつを以て也。
というわけで、明日から立夏までが春となるそうです。確かに日照は日に日に長くなってきており、来週はもうちょっと暖かくなるような。
 そこで、昼食を買いに行くついでに、キャンパス内で春の気配を探ってきたのですが、まだまだ春は遠いようでした。ルベソンヴェールの裏山?を散策したのですが、寒い日々が続いたこともあり、草木はひっそりと静まり返るばかり。

030212_1.jpgルベソンヴェールの裏山。その奥を井の頭線が横切る。
 そんな中、かわいらしい赤い実をつけたマンリョウの木を見つけました。果実は10月頃赤く熟し、翌年2月頃まで枝に見られる、とのことなので、この正月の縁起物も、春が来れば見納めです。近くの木々をメジロ?が飛び回っていましたが、おいしくないのか、マンリョウの実には興味が無いようで。この実が落ちる頃には、梅のつぼみも目を覚ましているでしょう。

030212_2.jpgマンリョウの葉の波状に膨れた部分には、共生細菌用の部屋が用意されているのだそうです。固定した窒素が家賃ですね。

Jan 27 2012

駒場のキノコ

 ホームページをリニューアルしたのに伴い、このページでは、「駒場だより」と題し、ラボや研究科の様子、さらには駒場キャンパス内で見つけた自然などについて報告していこうと思います。
 記念すべき第一回目の話題は、植物のラボなのに、「キノコ」です。というのも、16号館裏の野球場の脇で、とても立派なキノコを見つけたからです。

キノコ1.jpg切られた桜の枝に立派なキノコが3本。触ると結構かたい。

 シイタケに似ているように見えますが、キノコには詳しくないので、分かりません。キャンパス内は緑が豊とはいえ、都会のど真ん中でこんな立派なキノコに出会えるとは思っていませんでした。もう少し彼らを見守っていこうと思います。

キノコ5.jpgケータイと比べても、結構でかい。キノコ4.jpg裏から見ると、ますますシイタケに見える。
RIMG0015.jpg三つ並んで迫力満点。とても美味しそうに見えるんだけど。

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